相場より安い物件にはどのような理由があるのか

別荘生活

世の中には周辺にある別荘の売買価格と比較しても、著しくその金額が低い物件が存在しています。
もちろん単純に安いからといって飛びついてしまうのはリスクがあり、金額の背景にある何らかの理由を探った上で、その物件を通して得られるベネフィットと比較をしながら慎重に検討することが必要です。

元の持主が亡くなった事故物件

不動産界隈で事故物件といえば、元の持主が通常ではない方法で室内で亡くなったような物件のことを指しています。

高齢化社会といわれるなかにあって、一人暮らしをしている高齢者が誰からも看取られることなくひそかに亡くなってしまい、数か月後に異臭などの異変に気づいた近隣住民によって発見されるといったケースは珍しくありません。
この場合には売却をするにも特殊清掃が発生しますので、老衰や持病による自然な亡くなり方とは一線を画す必要があります。

もちろん若い人であっても将来を悲観して命を絶つケースもあり得ますので、その場合も事故物件として分類されます。

こうした事故物件は住宅としての機能には特段の問題はないものの、心理的な意味で一般人にとっては住むのに抵抗感があるのがふつうですので、「心理的瑕疵」などと呼ばれることもあります。

これらは国土交通省が定めるガイドラインで売主に告知義務が明示されており、基本的にその事実を隠して売買されるおそれはほぼないとみられますが、いずれにしても気分のよいものでないことは確かです。

したがってこうした理由だけでも金額が相場より2、3割は安くなることがあるため、もしも心理的に気にならない人にとってみれば逆にこれほどお得な物件はないかもしれません。

管理費が膨大にかかる物件

これは築浅で一見するとキレイにもかかわらず、謎の安さで販売されている別荘地の物件にありがちなものです。

一般に一戸建て住宅はアパート・マンションのよう集合住宅とは違って、毎月の管理費や共益費を支払う必要がなく、ランニングコストが安いと思われがちですが、かならずしもそうとは言い切れない事情があります。

高級別荘地に建っている物件の場合には、まずは購入した最初の段階で、名義変更手数料であったり、道路負担金や水道施設負担金、温泉施設負担金などといった費用を一括で納付なしければならないことが少なくはありません。
その価格は別荘地によってまちまちですが、たいていは数十万円単位の大金ですので、この時点で購入資金に余裕がない場合には、残念ですがその物件の購入はあきらめるほかはありません。

また購入時にこうした費用を支払ったとしても、その後物件を所有している限り、さらに毎月の管理費や温泉施設使用料、水道施設使用料などがかかることがあります。
こうした料金は土地の上に建物が建っているかどうか、建物は定住・別荘使用のどちらのパターンか、土地の面積はいくらかといった、さまざまな要素によって具体的な金額が異なることがあります。
一般には建物がすでに建っていて、年間にわたって定住しており、土地の面積が大きい場合がもっとも費用がかかります。

管理費などの費用負担の実例
事例1 施設協力費
1坪当たり(3.3m2)1,000円から7,000円の範囲内で区画ごとに定める額
管理費
一般管理費 1坪当たり(3.3m2)年額100円
水道管理費
一般使用者 1区画当たり年額 3,000円
常時使用者 1戸当たり年額 60,000円
事例2 管理費
土地のみ 15,000円
建物あり 46,000円
水道料金
年間27,600円(小口使用者の場合)
事例3 管理基本金 200,000円(土地購入時のみ)
共益費
土地のみ 年額15,000円+25円×所有面積(500平米以下の場合)
建物あり 年額20,000円+30円×所有面積(同上)
水道費
別荘利用 年額33,770円
定住利用 年額37,620円
水道施設負担金 800,000円(中古建物の場合は440,000円)

いずれにしても上記の費用を支払い続けることを想定すると、いくら建物本体の価格が安くても、まったくお買い得ではないということがわかります。
つまり、こうした物件は将来にわたってかかることになる膨大な管理費の負担を、あらかじめ本体価格の値引きで補っているだけのことです。

もちろん、物件によっては土地の面積が小さく管理費の負担も少なかったり、温泉施設を契約しないことにより膨大な支出を回避できたりするケースもあり得ますので、一律にデメリットのほうが大きいというわけではありません。

再建築不可となっている物件

古い時代に建築された市街地の物件にしばしば見られるのが、再建築不可物件とよばれるもので、こちらも販売価格が極端に低くなるケースが多いといえます。

再建築不可物件とは、現在建っている建物を解体して更地にしたとしてても、同じ土地に建物を再び建てることができない土地のことです。 都市計画法で定める「都市計画区域」や「準都市計画区域」にある土地に建物を建てる場合、「幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならない」という建築基準法の接道義務を満たさなければなりません。

しかし現在の建築基準が施行される以前に建てられた建物もかなりの数に上るうえ、不利益な法律の遡及適用は原則としてできないことになっていますので、接道義務を満たさない建物であっても残存しているケースはあり得ます。

それでは再建築不可物件の購入にはまったく意義がないのかといえばそうでもありません。
もしも周辺の土地まで購入するか、セットバックをして「道路に接する」条件を満たすことができれば、もはや再建築不可物件ではなくなります。
また、再建築はできないとしても、現在の建物をリフォームしてそのまま住むことは可能ですので、建物としての耐用年数がまだ見込まれるようであれば、安い価格でリフォームにより新築同然の姿にしてから住むのもよいでしょう。

デメリットも活用のしかた次第

このように相場よりも安い物件にはさまざまな理由があり、それは一般的な物件と比べればデメリットになりがちなものです。
しかし、個別具体的な事情をよく検討した上で、実現したいライフスタイルに合った選択をすれば、逆に快適な生活環境を安価で手に入れることができるチャンスにもなります。